2011年9月号
A4版・60頁
2011年9月号
◎論文・レポート
増加する九州・山口企業の海外進出
本格化する九州とインドの経済交流
◎九州の景気 震災から回復に向かうも、先行きの不透明感高まる
◎ワンポイント解説
“医療系”“地域密着型”の全国シェアが高い九州の介護サービス
内容
1. 論文・レポート 増加する九州・山口企業の海外進出/本格化する九州とインドの経済交流
2010 年の九州・山口企業の海外進出は80 件となり、2010 年は06 年以降では最高を記録している。業種別構成比をみると、飲食や小売など の「対個人」サービス関連企業の進出が目立つ。なかでも特徴的な動向を示すのは飲食業や大学の進出である。飲食業の進出戦略には3つの特徴がみられる。1 つは現地に根付いた経営の深化、2つ目としてはグローバル市場の足がかりとしてシンガポールを選択、3つ目は日本食ブームの多様化を背景に、九州のローカ ル食文化の展開といったことが挙げられる。また地域別の海外進出状況をみると、中国以外のアジア、とりわけインドへの進出が増加傾向にある。中国と並んで 10 億人以上の人口規模を誇り、2011 年8月1日から日印EPA の発効により、一層の経済交流が進むと考えられるインドへの進出は注目される。戦 略的なインド展開を図っている黒崎播磨からは、インドを新たなグローバル戦略拠点にしようとする意図が読み取れる。
2. 九州の景気 震災から回復に向かうも、先行きの不透明感高まる
2011 年4~6月期の九州地域景気総合指数(CI)の一致指数は101.3 となり、前期を3.2%上回った。震災ショックの影響は一部に残るもの の、急ピッチで通常の回復軌道へ向かっている。震災の影響をもっとも強く受けた生産活動は、3期ぶりに前年同期比プラスに転じている。大幅に落ち込んだ自 動車生産も5月には急速に回復に向かっている。民間投資と雇用については、震災の影響もほとんど感じられず、これまでの回復トレンドが継続している。ただ 消費活動については震災後、依然として低水準が続いている。また、企業活動についても7~9月期までは回復基調が維持されるものと思われるが、マインドに 関する先行指標には弱さがみられ、米国経済の悪化や急速な円高傾向もあり、下期以降、弱さが出てくる可能性も高まってきた。
3. ワンポイント解説 “医療系”“地域密着型”の全国シェアが高い九州の介護サービス~独立行政法人福祉医療機構「WAMNET介護事業者情報」より
九州の介護保険給付サービス提供事業者の全国シェアを分析すると、九州の介護サービスには、第1に“医療寄り”の施設・サービスが多い特徴がある。この 背景には、九州における病院数の多さが関係している。第2に地域密着型サービスの全国シェアが高いことが挙げられる。なかでも福岡県は「小規模多機能型居 宅介護」「地域密着型特定施設入居者生活介護」が全国1位、「認知症対応型共同生活介護」が2位となるなど、全国でもトップの水準にある。