2011年5月号
A4版・52頁
2011年5月号
◎九州の景気
生産活動に影を落とす震災の影響
◎ワンポイント解説
2011年3月の家計調査 ~震災後、九州でも遠距離レジャーが自粛されマイナスに
◎Generation Z
学生の購買範囲を広げるJR博多シティ
内容
1.生産活動に影を落とす震災の影響
2011年1~3月期の九州地域景気総合指数(CI)の一致指数は97.6と前期を4.6%上回った。しかし、震災の影響から3月は前月比0.7%プラ スと伸びは鈍化し、2月まで再加速していた回復のピッチが震災によって腰折れした格好となっている。3月は九州の生産事業所も一部で稼働停止となり、また 心理的ショックも大きく、生産・消費ともに急激に悪化した。しかし、震災により寸断されたサプライチェーンも4月中旬以降徐々に回復し、主要事業所も再稼 働して、その結果、消費者心理も上向きはじめ、消費活動・余暇活動も動きがみられるようになった。今後最も懸念されるのは、自動車関連の生産である。5月 半ば現在、震災以前と比べ、5~8割程度の稼働にとどまっており、各事業所とも順次稼働を高めていくとのことであるが、部品調達の不安定さから年内の生産 は前年を下回る公算が高い。このことが雇用や所得、さらには消費に影を落とす可能性もあり、自動車関連生産の停滞が長期化すれば、九州経済全体に及ぼす影 響がさらに拡大することは間違いない。
2.ワンポイント解説:2011年3月の家計調査
総務省の家計調査より、震災が発生した3月の家計消費支出をみると、全国は前年比8.4%減、九州7県では同2.1%減であり、震災による九州への影響 は全国と比べて軽微であった。消費支出を品目分類別にみると、全国と九州で違いがみられた。「教養娯楽」のマイナスはレジャーの自粛によるものであるが、 全国では外食や旅行に関連する支出が軒並み減少しているのに対して、九州では「外食」「宿泊料」「パック旅費」がマイナスとなり、逆に「鉄道運賃」「入 場・観覧・ゲーム代」がプラスとなっている。このことから、震災発生に伴い、宿泊を伴う旅行から日帰りレジャーにシフトしたものと推測される。内閣府の 「景気ウォッチャー調査」の4月結果からも、九州における消費マインドの回復はみられず、来期も消費支出の悪化が続くことが懸念される。
3.Generation Z:「学生の購買範囲を広げるJR博多シティ」
学生にJR博多シティの利用に有無を尋ねた結果、既に7割の学生がJR博多シティを利用している。そのうち8割以上の学生が、再度利用する意向を示して いる。とくに「東急ハンズ」や「クリスピー・クリーム・ドーナツ」などの九州初出店の店舗が人気があるほか、九州内に既に出店している店舗の利用も目立っ た。しかし、今後も8割近い学生が天神地区で買物をすると回答しており、普段の買物は天神地区で行い、天神地区にないものを博多地区に求めて回遊する様相 が目に浮かぶ結果となった。