2010年10月号
A4版・48頁
2010年10月号
特集:農業の新しい可能性
◎論文・レポート:閉鎖系制御型栽培システムにおけるLED活用の可能性
◎鵜目鷹目:農業参入企業の販路開拓
◎ワンポイント解説:九州・山口の農林水産物・食品輸出
内容
論文・レポート 閉鎖型制御型栽培システムにおけるLED活用の可能性
世界的にLEDの普及が予想されるなか、農業や植物工場におけるLED照明の応用が指摘されている。LEDとのかかわりで実現する可能性が高いものとし て、光の制御で生長性に大きく影響する植物や菌類を想定した人工的なシステムである「制御型栽培システム」が注目されている。しかし現時点では、LEDの 持つスペクトルが植物の光合成スペクトルと合致していないことや他の光源と比べてコストが高いことなどにより、普及は進んでいない。一方で、高度な光制御 を必要とし、コスト増を許容できる「特保・医療品」においてLED活用の可能性が見いだせる。九州には植物生理学等の研究を行う3つの研究施設があり、出 口となる医療品分野などの研究施設も存在するため、LEDを使った医薬品原材料生産を目指す閉鎖型制御型栽培システムの先導的な研究が可能であるだろう。
鵜目鷹目 農業参入企業の販路開拓
農業従事者の高齢化や後継者不足問題を抱える農業を取り巻く環境の悪化や食に対する安心・安全への関心が高まるなか、農業へ参入する農外企業が相次いで いる。なかでも、建設業や運輸業など非フードビジネス企業の参入が目立ち、それら参入企業の多くは販路開拓を課題としている。すでに販路を確保している非 フードビジネス企業の販売先は、概ね3パターンに分けられる。1つがネット通販や観光農園、直売所など“対個人直販型”である。2つ目としては直販型のな かでも開拓が難しいとされる百貨店やスーパーなどが販路となる“対法人直販型”、3つ目が農家にとってはもっともスタンダードな販路である農協などを利用 した“共販組織利用型”である。ただし現実的にはそれぞれの販路の長所と短所を生かすため、複数の販路を確保している企業が多い。
ワンポイント解説 九州・山口の農林水産物・食品輸出
日常必需品であることから、景気の変動を受けにくい農林水産物や食品であるが、九州・山口の農林水産物・食品輸出は工業製品が大部分を占める輸出通関額 計と同様の推移をたどっている。直近の2010年上期は前年を13.4%上回り、直近のピークである07年の8割の水準にまで戻している。輸出額による品 目別のランキングからその特徴をみてみると、まぐろをはじめとした多くの魚介系の品目が上位を占めている。その他の特徴的な品目に「スープ、ブロス及び スープ又はブロス用の調整品」(4位)などがあり、日本の食文化が浸透している状況がうかがえる結果となった。また、九州管内の税関での輸出通関額の全国 シェアを品目別のランキングにすると、輸出通関額では上位にない果実・野菜が20位までに4品目ランクインしており、九州の農業生産力を背景にアジアに近 いという地理的優位性が生かされている。