2008年7月号
A4版・60頁
2008年7月号
◎論文・レポート
成長が期待される九州の組込みソフトウェア産業
九州における企業の提携戦略と事業所展開
◎シリーズ 九州の大規模工場
三井化学株式会社大牟田工場
◎ワンポイント解説
拡大する中東向け輸出
内容
成長が期待される九州の組込みソフトウェア産業
組込みソフトウェアとは、電気機器・機械に搭載された制御処理等を行うコンピュータシステムを構成するソフトのことである。この組込みソフトウェアの市 場規模は、この4年間で1.5倍、3.3兆円まで伸長し、ソフトウェア産業の新たな収入源として期待されている。九州では電気機器に加え自動車向けの組込 みソフト開発需要が大きく、事業の主軸になってはいないものの、多くの企業がその成長性を評価している。また、業界では深刻な技術者不足に悩まされてお り、人材を確保するため九州に進出する企業も多い。人材が競争力の源泉となる組込みソフトウェア産業にあって、人材が育てば九州に新たな開発拠点を設置す る動きにつながる可能性もあり、産学官あげての人材育成体制の整備が求められる。
九州における企業の提携戦略と事業所展開
提携戦略はバブル崩壊後の景気低迷の中で事業の見直しを迫られた日本企業において積極的に活用されてきた。提携を行った企業の九州における事業所展開を みてみると、九州外に本社を置く企業では海外と提携したのと同時期に、九州でも同種の事業を行う事業所展開が認められ、九州の事業所は海外拠点の単なる 「調整機能」という位置づけしか有していない可能性もある。2005年から再び提携を伴う事業再編の動きが活発化しているが、この動きが九州の事業所に とってプラスの効果となるためには、全社的戦略にマッチした中核的な事業を担うものになっているかどうかにかかっている。
九州の大規模工場 三井化学株式会社大牟田工場
三井化学大牟田工場は、同社の主力5工場のなかで最も歴史があり、設立は明治時代にまでさかのぼる。戦前までは三井鉱山三池鉱業所の石炭を基盤とした石 炭化学コンビナートを形成していたが、その後、原料は石油に切り替わり、今、複数の工場群が連結されたコンビナートは形成されていない。しかし、そのよう な工程の縛りがなくなったことで、高屈折率プラスチック眼鏡レンズ材料や自動車の機構部品、ICトレイに使われる高耐熱性樹脂など高付加価値で多様な製品 群を生産する工場として位置付けられるに至っている。
ワンポイント解説 拡大する中東向け輸出
中東諸国への輸出は原油価格の上昇が勢いを増した2004年から07年にかけ、急激に増加している。全国は96.7%増、また九州・山口は全国には及ば ないものの約6割増加している。中東向けの輸出品をみると、鉄鋼製品や化学製品など基礎素材品が多いが、インフラ整備に関連するボイラーやタービン、貨物 自動車用タイヤのほか、プレジャーボート用の船外機なども増えており、社会基盤に加えリゾート開発等が急速に進む今の中東の勢いを映しだしている結果と なっている。