2007年10月号
A4版・60
2007年10月号
◎論文・レポート
九州山間地域における「限界集落」問題 ~森林管理との関連を中心に~
新時代を迎える九州の国際港湾物流
ローカル・マニフェストは地域活性化の新しいツール
◎ワンポイント解説 円安ウォン高により韓国人旅行客が増加
内容
1.九州山間地域における「限界集落」問題 ~森林管理との関連を中心に~
本稿では、「高齢者が集落人口の半数を占め、社会的共同生活の維持が困難な集落」と定義される「限界集落」の問題について、森林資源の管理という点から 考察している。九州の山間地の過疎集落では、高齢化や世帯数・世帯人員の減少から、集落の「限界化」が進行している。集落の維持には行政コストもかかるた め、無住化や集落移転を進めよとの主張もある。また、市町村合併の進展が、森林資源管理等の公益的役割も担う林業に対する町村の独自施策を後退させている 面もある。しかし、山間住民による森林資源管理は、森林の水源涵養や下流への土砂流出防止等の機能を備えており、それらを十分に踏まえた議論が必要であ る。
2.新時代を迎える九州の国際港湾物
近年、九州の国際港湾は、国際コンテナ航路の充実やスピーディな輸送モードの導入により、対アジア物流拠点としての存在感を高めている。特に、国際 RORO船等のスピーディな輸送モードの導入により、九州域外から貨物を集めることに成功している。それらは、航空輸送より低コストで、リードタイムも遜 色がないという強みを持っており、アパレルやデジタル家電、家具、農水産物等、幅広い分野で需要を開拓している。今後は、輸送品質の向上や新たな輸送需要 の掘り起こし等を行い、対アジア物流拠点としての強みを活かした発展を目指すべきである。
3. ローカル・マニフェストは地域活性化の新しいツール
ローカル・マニフェストとは、自治体の首長候補が選挙において掲げる「首長公約」であり、これを導入した選挙は、候補者が主張する政策に目標値や財源等 が明記され、政策が検証可能となる。さらに、選挙勝利後、首長が行政組織を動かしていく後ろ盾ともなる。九州では、ローカル・マニフェスト推進ネットワー ク九州が組織され、マニフェスト型の政策評価・検証の普及が行われている。同組織が主催・支援したマニフェスト型公開討論会は40回にのぼり、開催数は全 国一である。
4. ワンポイント解説 円安ウォン高により韓国人旅行客が増加
法務省「出入国管理統計年報」によると、2006年における九州・山口への入国外国人数は、前年比19.8%増の95.7万人となり、3年連続で増加し た。アジアからの入国者の増加に寄与しており、なかでも韓国からの入国者は、入国者全体の6割を超えている。買物、ゴルフ、温泉等を目的とした観光客の増 加が続いており、円安ウォン高が増加を後押ししている。