2025年の九州経済
2025年の九州経済(要約)
【研究の目的】
・ 2007年1月、道州制ビジョン懇談会が設置。九州でも、2007年5月、九州地域戦略会議第2次道州制検討委員会が設置。道州制に関する議論が本格化。 ・ 道州制が導入された場合、九州経済にどのようなインパクトを与えるのかを定量的に把握することを目的に道州制導入後の2025年の九州経済を長期予測。 |
主 な 内 容
1.九州経済モデルの基本的枠組み
・ 九州7県を一地域としたマクロ計量経済モデル(九州経済モデル)を採用。
・ 経済指標を予測する経済モデルと人口を予測する人口モデルから構成(図1参照)。
・ 所得格差によって、転入(出)超過数が変化するように経済モデルと人口モデルをリンク。
2.モデルの前提条件:道州制導入による効果
・ モデルの前提条件は、①一体的政策による地域競争力の向上、②権限拡大による産業基盤整備への重点投資、③行政コスト削減とその再配分。
・ 道州政府は、道州制導入後、経済成長を志向する政策を選択すると仮定。
・ 想定値は、積極的に道州制導入を進めたハイケース、やや積極的に道州制導入を進めたローケース、未導入ケースの3ケースごとに設定(表1参照)。道州制導入年次は2015年度と仮定。
3.道州制導入後の九州経済のシミュレーション結果
・ 道州制導入を仮定した2015年度から2025年度までの九州の年平均経済成長率は、ハイケースで2.1%となり、全国の経済成長率1.7%を上回った(表2及び図4参照)。ローケースと未導入ケースは全国の経済成長率を下回る。
・ 全国の1人当り実質GDPを100とした九州の所得水準は、2005年度では82.9であったが、ハイケースの場合、2025年度には85.3まで改善し、所得格差が縮小した(図5参照)。ローケースと未導入ケースでは格差が拡大。
・ 全国との所得格差が縮小することによって、ハイケースでは、2023年に転出超過から転入超過に転じ、2025年にはおよそ3万人の転入超過が見込まれる(図6参照)。
4.おわりに
・ 道州制導入によって、全国水準を上回る経済成長が達成され、全国との所得格差が縮小することで九州域内への転入者数が転出者数を上回り、それがさらなる経済成長へとつながる「正の連鎖」を実現できる潜在成長力を確認。
・ 今後の政策課題としては、①一体的政策によって、研究開発、人材育成、組織変革等を進め、地域競争力を高めること(地域競争力の向上)、②地方の権限を拡大し、社会資本整備の重点配分を行うこと(公共投資の配分)、③行政改革を進め、行政コスト削減分を地域発展の原資として有効活用すること(地方財源の有効活用)、が挙げられる。