9/17、令和2年7月豪雨による九州の社会・経済への影響④を発表しました
令和2年7月豪雨から2カ月が経過しました。2020年7月3日から約1週間にわたり発生した令和2年7月豪雨は、熊本県や九州北部、中部地方を中心に甚大な被害をもたらしました。浸水、土砂崩れなどの被害により多くの人命が失われるとともに、未だ多くの建物・事業所等が毀損している状態であり、さらに新型コロナウイルス感染拡大防止のため災害ボランティアの活動が制限されるなど、復旧が思うように進まない状況にあります。1日も早い復旧・復興がなされることを祈るばかりです。
九州経済調査協会では、令和2年7月豪雨による九州地域(九州、沖縄県、山口県)の社会・経済への影響について調査を実施しています。第4弾となる本レポートでは、位置情報分析を手がける株式会社コロプラおでかけ研究所との共同調査によって、スマートフォンの位置情報に基づく災害前後の居住地判定を行い、被災地の避難実態を捉えることを試みています。対象地域は、国土地理院、九州地方整備局が公表する国管理河川の浸水推定図を元にした「浸水被害地域」24市町村としています。
なお、活用するスマートフォンの位置情報は、国内最大規模の位置連動広告サービス運営者が有するGPS位置情報ビッグデータです。200種類以上のスマートフォンアプリに組み込まれた位置連動広告SDK4で、個別に利用許諾並びに第三者提供許諾が取れている全国の月間1,000万人の行動ログデータを同社の業務提携先である株式会社コロプラおでかけ研究所が分析しました。対象24市町村のサンプル数は、月間32,000人程度です。スマートフォンのGPS等で捉えられる位置データは、位置把握の精度が高く、細かな人の動きを把握できる点に特徴があり、居住地判定が容易です。
居住地判定としては、2020年4月16日~2020年6月15日の2カ月間における夜間帯(22時~翌朝5時)で最も多く滞在した場所を「居住地」とし、その居住地に滞在している人を「居住者」とします。その上で、居住地と異なる場所で夜間帯に滞在している方のうち、災害前平時(2020年7月1日~2日)の外泊者を除いた方を「避難者」と定義します。その上で、居住者にしめる避難者の割合を「避難比率」と定めて避難実態の分析を行います。
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多くの市民の避難が継続している球磨村と人吉市
令和2年7月豪雨において、浸水被害を受けた24市町村の多くで避難比率が低下しており、日常の生活を取り戻しつつあります。しかしながら、災害から2カ月近くが経過した8月末においても、球磨村と人吉市では依然として避難比率が高いです。8月31日の避難比率は、球磨村が44.5%と突出して高く、人吉市が10.7%で続いています。球磨村では、いまだに村民の約半数の方々が、住み慣れた居住地と異なる場所での生活を強いられています。人口に割り戻すと、球磨村が約1,700人、人吉市が約3,400人程度、避難生活を継続している可能性があると見込まれます。この2カ月間の推移をみると、特に球磨村と人吉市の避難比率に改善の動きが見られず、いまだに多くの市民の避難が継続している様子がうかがえます。
特に、球磨村は、豪雨当日の7月4日に52.2%、7月5日に71.0%、7月6日に62.6%、7月7日に67.9と、豪雨のさなかには一時的に村民の約7割の方々が居住地を離れて避難をしていたとみられます。その後、7月8日からも約4割~5割程度の高水準で避難が続いています。中心市街地が浸水した人吉市においても、豪雨当日の7月4日に15.2%をピークとしつつ、その後も約1割前後の避難比率が継続しています。
一方で、豪雨当初は人吉市と同レベルの避難比率であった芦北町に関しては、豪雨当日の7月4日の12.0をピークとしつつ、7月上旬までの間に平時の水準に戻ってきています。その他の21市町村に関しても、災害当日の7月6日に大牟田市(10.3%)や相良村(9.4%)、みやま市(8.2%)などで避難比率が一時的に高まった自治体もみられますが、多くの自治体が数日のうちに平時の水準に戻っています。
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