拡大するイスラーム金融

糠谷英輝

蒼天社出版

本橋一夫(2010/06/02 掲載)

20年後には世界人口の三分の一に増えるともいわれるイスラーム教徒の人口。イスラーム教徒は、その生活の全般にわたってイスラーム教の戒律を規範とするが、それは個人としての生活にとどまらず、社会生活、経済活動全般に及ぶ。
イスラーム金融は、イスラームの戒律に基づいた金融システムであり、従来我々が慣れ親しんだ金融システムとは根本的、かつ大きな違いを持つ。中でも「利子の禁止」はその根幹に関わる問題で、この問題の解決と、中東におけるオイルマネーの台頭が、その発展に大きく寄与している。
本書はイスラーム金融の歴史からその基本的なスキーム、現在の世界金融の中で果たしている役割に至るまで基本的な知識を与えてくれるし、非イスラーム世界の金融機関との協調に関しても、幾つかの事例によってわかりやすく示されている。
今後の世界金融市場において益々その存在感を増してくること確実なイスラーム金融を知るための基本書として好適の一冊である。

プロフィール

本橋一夫

丸善 丸の内本店 ビジネス・経済書担当 ・ブックアドバイザー