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20歳のときに知っておきたかったことスタンフォード大学集中講義
Tina Seelig 訳:高遠裕子
阪急コミュニケーションズ
中武貞文(2010/07/14 掲載)
読み始めたとたんに引き込まれる本がある。時間も、食事も忘れるような本。この本はまさにそういう本。著者のTina Seeligはスタンフォード大学アントレプレナーセンターにて起業家教育を行っている。日本でも「起業」は取り上げられることは多くなった。日本の経済活性化の起爆剤として位置づけられているといっても過言ではない。しかし、「うまくいった起業」はなかなかお目にかかれない。こんな話をするとすぐに教育や社会問題が議論されてしまう。私自身はこういった議論には少々辟易している。というのも、「日本には起業文化がなく、欧米にはある。だから、欧米型を目指さなければならないのだ。」という論調に疲れているのかもしれない。しかし、この著書に登場する様々な起業家のエピソードに触れると、世界から目標にされているシリコンバレーの起業家であっても、我々と同じような失敗をし、同じところで悩んでいることがわかり、ちょっとほっとする。何とも「人間くさい」のである。
鹿児島大学に着任し、起業とも関係の深い技術経営の講義を持つことになった自分にとって、小手先のテクニックよりも、「人間の真ん中にあるもの」が大事なんだと感じさせた1冊。
「判断に迷ったときには、将来そのときのことをどう話したいかを考えればいいのだと気付きました。将来、胸を張って話せるように、いま物語を紡ぐのです」という著書の言葉には、悩み多きアラフォーの心に響いた。
「おい、お前の知らない大事なことがこの本に載っているぞ!!」と二十歳の頃の自分に勧めたい。そして、私はこの「今」から新たな物語を紡いでいくこととしよう。
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プロフィール
中武貞文
鹿児島大学 産学官連携推進機構
准教授