21世紀の本棚 九州・沖縄で豊かに生きるために

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財団法人　九州経済調査協会

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ある日、皆さんが事業のトップに就任することになったら、どうしますか？
本書は、大手製鉄会社から医療機器の関連会社に役員として派遣された36歳の主人公が、卓越した戦略によって企業を再生していくノンフィクションである。
本書に登場する企業や人物、製品は仮名が使われ、一部脚色がされているものの、市場環境や競合の動きは事実に基づいており、主人公のモデルとなったのは著者自身である。こうしたことから主人公の苦悩も丹念に描かれており、読者は経営の難しさを疑似体験していく。本書は臨場感のあるビジネスケースとも言え、経験豊かなビジネスパーソンも共感できる。
本書の特徴の1つは、戦略の策定と実行をリアルに描いていることであり、「課題を整理する順序」、「戦略策定に必要な情報」、「意志決定のポイント」などのエッセンスが散りばめられている。ストーリーは、読者にも主人公の立場に基づいた思考や判断を求める構成になっており、事業戦略を実践に使えるレベルとして吸収することができる。このようなことから、初版は1991年でありながら、現在もビジネススクールの教材として使われている。
ビジネスが複雑化する中で、優れた戦略の策定が求められているが、本書は実行力のあるリーダーシップと結びつかなければ、戦略だけでは無意味と説く。本書のタイトル「戦略プロフェッショナル」とは、戦略の策定力と実行力を併せ持った人材なのである。
事業のトップになるかどうかは別として、“トップになってもやっていけるかも”、そんな思いを頂かせる１冊でもある。