超熟ヒットの理由

品川雅彦

幻冬舎メディアコンサルティング

本橋一夫(2008/10/21 掲載)

食パンのNo.1ブランド、敷島製パン「超熟」の物語。
「炊き立てのご飯のような味わいと、毎日食べても飽きないおいしさ」をコンセプトに、プレミアム商品ではなく、ごく日常的な価格帯の食パン開発を目標に掲げ、そのために湯種製法という味は良くなるが品質を安定させにくく大量生産には向かないと言われている製法を採用し、一方、品質の安定には欠かせないため大量生産の食パンには必ず入っている脱脂粉乳を後味が凡庸になるとの理由でレシピから外す・・・読んでいるうちに、結局ブランドって作り手の姿勢の問題なんじゃないかなと思えてきました。とにかく徹底的にこだわって作られてます。
 そうして出来上がった商品への信頼は販売促進戦略にも結びつきます。徹底した試食販売。「食べてもろたら、必ず購買につながる」とは発売当時の営業マンさんの回想。自信の程が伺えます。取引先との商談にはトーストにしたときのおいしさをアピールするためトースターさえ持ち込んだとのことです。
 発売後の品質維持も重要です。パンの品質にはスライス面のスムーズさというのも含まれるというのも、この本を読んで知りました。スライス面がざらついているとトーストしてバターやマーガリンを塗るときにパンくずが大量に落ちてテーブルを汚す。そんなパン、主婦は2度と買ってくれない・・・
 ブランド構築の何たるかを教えてくれる一冊です。

プロフィール

本橋一夫

丸善 丸の内本店
ビジネス・経済書担当・ブックアドバイザー