オバマがつくる福祉資本主義

福島清彦

亜紀書房

鎌田迪貞(2009/12/27 掲載)

オバマ大統領が、環境・エネルギー、医療、教育の三本柱を重点施策に挙げ、市場原理主義から福祉資本主義への転換をはかっていると解説するのが本書である。

それは、彼の生い立ちから来る強い信念に基づくものであり、また、ヨーロッパの真似ではなく、アメリカの過去にあった福祉政策の再興であるという。
即ち、まず
・フランクリン・ルーズベルトの「ニューディール政策」(社会保障と交響事業支出)
があり、次いで、
・ジョンソン大統領の「福祉国家づくり」(医療と低所得者教育への公的支援)があった。
 オバマの「グリーンニューディール」は、これらを継承し再興するものである。それは、公共投資を伴った「大きな政府」となるが、オバマは、政府の大小は問題ではない、国民が働いて生活出来るように、政府が機能しているか否かが問題であるという。
 
本書は、オバマの政策も福祉資本主義の世界的進化の一環であると位置づけ、福祉政策が肥大化する要因として、高齢化や所得格差の拡大、民主化の進展など5項目について検討している。
また、北欧と中欧とアメリカとで福祉政策のあり様が異なることや、21世紀に入って福祉国家が変化したことなど、それぞれ表にしてわかり易く説明している。

鳩山政権は、子ども手当や高校授業料の無料化など、福祉的施策を数多く打ち出しているが、財源や国民の負担の程度、政策の拡がりなどが不明であり、そもそも、どういう福祉国家を目指そうとしているのか、グランドデザインが示されていない。

この本からも読み取れるように、福祉施策の拡大が不可避であるとすれば、それにどう対処するのか、国民みんなで考えなければなるまい。
参考になる本だと思うのでお奨めする。

プロフィール

鎌田迪貞

九州電力株式会社 相談役