100 Inc.

エミリー・ロス、アンガス・ホランド著 宮本喜一訳

エクスナレッジ

島田龍(2010/04/07 掲載)

フィンランドのノキア社と言えば、世界で販売されている携帯電話の30〜40%のシェアを占める、世界最大の携帯電話端末メーカーである。日本でもすっかり有名になったノキアだが、実はつい20年ほど前まで、ノキアの主力製品はトイレットペーパーと冬季用スタッドレス自転車タイヤであったことをご存じだった方はどれだけいるだろうか。
 本書は、オーストラリアの代表的なビジネス誌「BRW」のシニア・ライターと日刊紙「The Age」のシニア・エディターが、世界の100企業のターニングポイントや創業秘話についてまとめたものである。紹介されている企業は世界的な大企業が中心で、マクドナルドやウォルマート、マイクロソフトといった普段から私たちに馴染みのある製品・サービスを扱う企業が多いため、576ページと大ボリュームであるものの読みやすい。
 冒頭のノキアの他にも、「マクドナルドは世界最大のサラダとヨーグルトの販売企業である」「倒産の危機に瀕したフェデックスでは、ラスベガスのカジノで一山当てて従業員の給料を支払った」「コカ・コーラは全世界で1秒ごとに12,600本が売れている」といった話が満載である。日頃から人と会話することが多い営業マンや経営者の方々にとって、良い話のタネになるはずだ。
 もちろん、本書の狙いは読者にトリビアを提供するだけでなく、誰を販売ターゲットにしたのか、どのように販路を開拓したのかといった「ビジネスモデル」を明らかにし、直面した困難にどう立ち向かったのか、何がきっかけでイノベーションが起こったのかといった「ターニングポイント」にスポットを当てることにある。自社のビジネスを考えたりこれから起業したりする上で、こうした成功のきっかけから学ぶべき事は多い。
ただし、一企業につき5〜6ページの記述に過ぎないため、本書をもとに詳細な企業研究を行うことは難しい。各社のビジネスをさらに深く紐解きたいと思ったら、各社ごとに詳細に研究された企業研究本を改めて購入することをお勧めする。

プロフィール

島田龍

九州経済調査協会 調査研究部 研究員