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だるまちゃんとてんぐちゃん
加古里子
福音館書店
大和泰子(2010/12/29 掲載)
物心ついた時から本好きだったはずなのに、なぜか絵本を読んだ記憶がほとんどありません。そんな私の幼い頃の思い出の絵本といえば『だるまちゃんとてんぐちゃん』なのです。どうしてこの絵本を手に取ったかはまるで覚えていませんが、小学校の図書館で何度も手に取って読んだことは確かです。
なんといっても、うちわや帽子、靴などがたくさん並んだページが素晴らしい!これを見るだけで幸せになれる魔法のページです。
飽きることなく、たくさんのアイテムの中から自分好みのものを選んで楽しんだことは忘れられません。児童書担当になった時も、迷わず最初にこの絵本を読み返しましたが、そのわくわく感は健在。それは今も変わらず、仕事の合い間に思わず遊んでしまうこともあったりするほどです。
もうひとつ、この絵本のお気に入りの理由をあげるとすると、おとうさんのだるまどんにおねだりするだるまちゃんが、最終的には自分で工夫して、欲しかったものをみつけたり、作ったりしているところなのです。
そんなこと昔は気づきませんでしたが、以前から絵を描いたり、何かを作ったりすることが大好きだった私は、知らず知らずのうちに、だるまちゃんと自分を重ねていたのでしょう。ある意味、だるまちゃんは、私のヒーローと言えるかもしれません。だからこそ、この絵本が私にとって、忘れられない心の友のような存在になっていると思うのです。
ところでいきなりですが、昔話でもないのに、だるまと天狗が主人公だなんてすごいと思いませんか?こんなちょっぴりエッジィなセンスのキャラクターだからこそ、子どもたちに人気なのかもしれませんね。
絵本の素敵なところは、本そのものに思い出や気持ちがプラスされて、オリジナルな一冊に育っていくところではないでしょうか?その上、読み返すたびに、今まで素通りしていた何かを発見できるあなどれないヤツでもあります。
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プロフィール
大和泰子
丸善福岡ビル店 児童書担当者