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昭和史発掘
松本清張
文藝春秋
麻生渡(2009/12/27 掲載)
松本清張生誕100年記念事業が各地で行われている。北九州育ちの清張は稀代の天才だと思う。小倉の記念館を訪れると氏の生涯にわたっての驚嘆すべき膨大な業績に圧倒される。
社会派として新境地を開拓し、推理小説は真に迫力がある。特に昭和史発掘は面白い。
2.26事件、芥川龍之介の死など昭和の重大事件を緻密に考証し、裏面まで踏み込み真相を語るすぐれた史書となっている。
このところ昭和史が盛んである。日本の将来を考える時、昭和史には多くの重い教訓がある。私たちは日本の思考と行動弱点を学び、これを克服しなければならない。
日本で本格的な政権交代が実現した。実は大正デモクラシーに始まり昭和初期は政党政権交代の時代だった。
しかし、1932年の5.15事件で時の首相犬養毅が暗殺され、政党内閣は終焉する。世界大恐慌、満州事変、テロの横行、政党政治は時の巨大かつ困難な課題に呻吟し、奮励、努力した。
しかし、国民の期待支持は軍へと向かい、政党政治は失敗。戦争への道へと突進してしまった。大新聞は競って日中戦争を煽った。
日本の政治はこの轍を踏んではならない。しかし当時の日本の失敗の原因はそのまま今の日本に当てはまることが多い。思い出すままに昭和史を勧めておきたい。
昭和史 (東洋経済新報社) 中村隆英
日本憲政史 (東京大学出版会) 坂野潤治
重臣たちの昭和史 (文藝春秋社) 勝田龍夫
軍国日本の興亡 (中公新書) 猪木正道
検証 戦争責任 (中央公論新社) 読売新聞社
真珠湾への道 (講談社) 大杉一雄
日本はなぜ敗れるのか (角川書店) 山本七平
「空気」の研究 (文春文庫) 山本七平