-
琉球文化の再認識(「琉球の文化」所収)
柳宗悦
春秋社
竹澤正明(2009/12/27 掲載)
ほぼ15年ぶりに沖縄の仕事に携わることとなりました。最近、最も心に残った書は、標題に掲げた論文で、1941年(昭和16年)の刊行です。
この書のなかで、柳宗悦は、これまでの歴代知事(筆者注:戦前の制度下です)の業績はけっして些少に評価されるべきではないとし、一定の好意的評価をしたうえで、次のように述べています。
「沖縄への最も緊要な贈物は、物資的財物よりも県民の「精神的自信」である。沖縄人に確信を与えずして、どうして沖縄を振興せしめることができるであろう」。
これに続いて、「今琉球にとって最も必要とするものは、琉球の価値認識である。積極的なその価値の上に立って、将来の運命を開拓することこそ最も妥当な方針といえよう」としています。
私はこの論旨に賛同するものであり、その明解な論理と力強い文章は、深く心に響きます。とりわけ、次の三点を我がこととして感じました。
その一。沖縄の精神的自信を一層強めるため、ソフト面とあわせ、有形的整備も行うこと。ソフトと有形的整備は対置の関係ではありません。トータル見通しをもった、わかりやすいプランに基づき、沖縄の振興を一層進めていくことが、沖縄の精神的自信につながります。
その二。沖縄の文化の良きものーさまざまなものがあると思いますがーを守り育てること。この論文では、織物と琉球語が例にあげられています。私も毎日、琉球藍で染めた、かりゆしを愛用し、美しさ、快適さを実感しています。
その三。沖縄を十分に知ることは、とりもなおさず、日本の文化がいかに豊かで、奥が深いか、を認識することであること。「沖縄ファン」になることは、実は、日本文化そのものの豊饒さを実感することなのです。
以上、この書は、約70年まえに書かれたものでありながら、光彩と力強さを少しも失っていません。21世紀においても、九州沖縄にかかわりつつ生きるすべての人々への、警鐘であり、また、励ましであり続けることを確信しています。