道州制に関する答申(第一次答申)

九州地域戦略会議 道州制検討委員会編

矢田俊文(2009/12/26 掲載)

推薦書:九州地域戦略会議 道州制検討委員会編の以下3冊
1.「道州制に関する答申」(第一次答申)平成18年10月24日
2.「道州制の『九州モデル』答申」(第二次答申)平成20年10月30日
3.「九州が目指す姿、将来ビジョン」・「住民及び国の関心を高めるためのPR戦略」平成21年6月2日


九州知事会議および九州における経済4団体によって構成される九州地域戦略会議が3年半かけて厳しい議論ののち作成した「道州制の九州モデル」である。国の地方制度調査会答申(平成18年2月)、全国知事会議の「道州制に関する基本的考え方」(平成19年1月)、経済団体連合会の「道州制に関する第1次提言」(平成19年3月)、内閣府道州制ビジョン懇談会の中間報告「地域主権型道州制国家」(平成20年3月)に続くものである。

しかし、国や知事会、経済団体など中央からの相次ぐ提案に対して、地方分権の担い手である「地方」からの本格的提案であること、個別の都道府県や経済団体ではなく、道州制の単位となる広域の行政組織や経済団体が一体となった提案であることに第一の大きな意義がある。また、行政の最前線、地域経済の担い手が、具体的な実践の立場から「国・道州・基礎自治体の役割分担」、「道州制を実現するための税財政制度」を深く掘り下げ、さらに道州制が実現したもとでの「九州が目指す姿、将来ビジョン」を解明したものとして、「21世紀の国のかたち」を大局的に指し示した中央組織からの提案と大きく異なる、第二の大きな意義がある。政権交代による地域主権の考え方の紆余曲折が予想されるものの、21世紀の人口減少社会のなかで地方の疲弊がとどまることを知らない流れを転換する最後で決定的な戦略として地方自らの意思で地域をつくることを宣言した「道州制の九州モデル」は、必読の書である。

プロフィール

矢田俊文

北九州市立大学学長